大晦日に響く除夜の鐘の音を聞くと、年の終わりを感じさせますね。
この鐘にはどんな意義があるのでしょうか?
そして、鐘が鳴る回数や時間には特定の規則が存在するのか探っていきたいと思います!
大晦日の鐘の意味
大晦日に鳴らされる鐘は、「じょやのかね」と読みます。
この鐘は仏教の伝統的な行事で、年の最後の日に寺院の鐘を鳴らし、その音に耳を傾けることで、一年間に積み重ねた罪や煩悩を清算し、心を浄化して新年を迎えるためのものです。
「除」の字は、古いものを取り除いて新しいものを迎えるという意味があります。
「除夜」とは大晦日の夜を意味しています。つまり、大晦日の夜に鳴らされる鐘のことを指します。
大晦日の鐘の起源
大晦日の鐘の起源ははっきりしていませんが、中国の習慣が日本に伝えられたとされています。
中国では、鐘を鳴らすことで心の悪い思いを払うと信じられており、月末には寺で鐘を鳴らしていましたが、宋時代(960年~1279年)に入り大晦日に限って鐘を鳴らすようになったそうです。
また、悪霊の侵入を防ぐために鐘を鳴らすとも言われています。特に「鬼門」とされる北東方向には特別な注意が払われ、年末年始が「丑」と「寅」に当たるため、大晦日に鐘を鳴らして悪霊の侵入を防ぐ目的があったと考えられています。
中国では現在もこの習慣が見られますが、日本では鎌倉時代に伝わり、それと共に臨済宗や曹洞宗などの仏教宗派も広まりました。
江戸時代になると、宗派に関わらず鐘を鳴らす習慣が広まり、明治以降には多くの寺院で行われるようになりました。一般に広く知られるようになったのは昭和時代に入ってからです。
除夜の鐘が108回鳴る意義
除夜の鐘がなぜ108回鳴らされるのか、その意味にはいくつかの説が存在します。
煩悩の数に基づく説
「煩悩」とは、仏教において心の平穏を乱す様々な心理的障害を指します。
人間が持つ煩悩の数が108とされており、大晦日に鐘を108回鳴らすことでそれらを一つ一つ払い清め、新年を清らかに迎えるという考え方があります。
この108という数字は、
人間の感覚器官「六根(ろっこん)」
――目、耳、鼻、舌、身、意――
から生じる感情を基に算出されています。
感情は「好(良い)」「悪(悪い)」「平(どちらでもない)」の3カテゴリに分類され、
さらに「染(汚れた感情)」「浄(清らかな感情)」の2種類に分けられます。
これらを過去、現在、未来の三世に適用すると、
「6(六根)×3(感情の種類)×2(感情の性質)×3(時間軸)=108」となります。
一年間を象徴する説
また、108という数字が一年間の周期を表しているという説もあります。
一年は12ヶ月で、二十四節気が24、古代中国で季節を示す七十二候が72で、
これらを合計すると108となります。
四苦八苦との関連性
仏教において人生の苦しみは「四苦八苦」と表現されます。
「四苦」は生、老、病、死を指し、
「八苦」はそれに加えて
愛別離苦(あいべつりく)⇒愛する人との別れ、
怨憎会苦(おんぞうえく)⇒嫌な人との出会い、
求不得苦(ぐふとくく)⇒求めるものが得られないこと、
五蘊盛苦(ごうんじょうく)⇒五蘊は肉体と精神のことで思うようにならないことが原因で起こる苦しみ
を含みます。
四苦は各9つ、八苦は各9つと考えることで、
それぞれ36と72、合わせて108という計算に至ります。
除夜の鐘の鳴らし始める時刻
各地のお寺では除夜の鐘を鳴らす時間が異なりますが、一般的には22時半から23時の間に開始することが多いです。
鐘の鳴らし方にはいくつかのパターンがあります
①108回を年内に完了させ、新年を清らかに迎える。
②年内に107回鳴らし、新年を迎えた後に最後の1回を鳴らす。
③ 大晦日から新年にかけて年をまたぎながら108回鳴らす。
除夜の鐘を鳴らす際の作法
除夜の鐘を鳴らす際には、寺院によっては僧侶のみが行うこともあれば、訪れる人々も参加できる場合もあります。
鐘を鳴らす機会がある場合、以下の作法に注意しましょう:
① 順番待ちの間は、静かに行動し、大声を出さないこと。
② 自分の順番が来たら、鐘の前で手を合わせます。
③ 鐘を一回鳴らします。
④ 鐘を鳴らした後、再び手を合わせ、新年の希望や願いを心に思い描きます。
⑤ 次の人に迅速に交代します。
多くの寺院では、鐘を鳴らす場所で住職や僧侶が指導を行い、子供たちのサポートを提供することがあります。
鐘を鳴らし終えて立ち去るときには、住職や僧侶が手を合わせるので、応じて手を合わせると良いでしょう。
全国の多くの寺院で一般の人々も鐘を鳴らすことができます。
108回を超えても参拝者全員が鳴らせる場所もあれば、正確な回数を守るために整理券を配布する寺院もあるため、訪れる前には確認が必要です。
この年末、自分で鐘を鳴らして、一年の煩悩や穢れを払い清め、新たな気持ちで新年を迎えてみてはいかがでしょうか。