日本で写真を撮る際、多くの人がピースサインをするのが一般的です。このポーズが日本に根付いた背景には、さまざまな要因が関係していると考えられています。特に、メディアや有名人の影響、さらには時代背景などが関与していると言われています。
また、写真撮影時に「はいチーズ!」と声をかける風習についても興味深い歴史があります。もともと英語圏で写真を撮る際に「cheese」と言うと笑顔を作りやすくなるという考え方があり、それが日本にも伝わったとされています。
それではなぜ「チーズ」という言葉が選ばれたのか、その理由やこの表現がどのように広まったのかを詳しく探っていきます。
本記事では、これらの文化的な習慣の背景を歴史的視点とともに掘り下げ、日本における写真撮影の特徴についても考察していきます。
ピースサインの背景と意味
ピースサイン、つまり「Vサイン」はもともと平和を願うジェスチャーとして、または「Victory(勝利)」の象徴として用いられてきました。このサインは、指を「V」の形にして示すことからその名が付けられています。
特に日本では、このサインを顔の近くで笑顔とともに示すことが多く、それが楽しさや喜びを表現するポーズとして一般的に受け入れられています。これが、写真撮影の際の定番のポーズとなり、広く普及している理由大見出し:ピースサインの歴史的背景
ピースサインの起源は、1337年から1453年にかけての百年戦争時代、イギリスとフランス間の戦争にさかのぼります。この時、イギリスの弓兵が使用していたロングボウはその射程と貫通力で知られ、フランス軍に大きな損害を与えました。
フランス軍は、捕虜となったイギリスの弓兵の指を切断して弓を引けなくすることがあったとされ、イギリス兵は全ての指が無事であることを示してフランス軍を挑発するために指を見せつけたとされています。
また、「Vサイン」は第二次世界大戦中に連合国が「Victory」の象徴として用いたジェスチャーです。このサインは、戦争中の勝利への願いを表すシンボルとして広まりました。
1960年代に入ると、アメリカやイギリスでベトナム戦争への反戦運動が活発化し、「Vサイン」は反戦の象徴としても用いられるようになります。デモ参加者が「Peace」と叫びながらVサインをすることで、これが平和のサインとしても一般化しました。
日本では、1972年に井上順がテレビCMや番組でピースサインを用いることで大流行しました。初期の流行後に一度衰退するものの、1980年代に入ると井上順が再びピースサインを使い始め、これが日本全国で再び流行しました。テ
レビでの頻繁な使用を通じて、さまざまなバリエーションが生まれ、楽しさや喜び、親愛の情を表現するジェスチャーとして写真撮影時の定番ポーズとして定着しました。
「はいチーズ!」というフレーズの起源
フレーズ「はいチーズ!」は、19世紀末の英語圏、特にイギリスやアメリカで生まれたとされています。当時、カメラはまだ珍しく、専門の写真館でしか撮影ができず、一枚の写真を撮るのにも高額なコストがかかっていました。
撮影される人々は緊張から硬い表情をしてしまうことが多く、それを和らげるために写真家が「Say cheese!」と声をかけることで、自然な笑顔を引き出す工夫が始まったと言われています。
この「cheese」という言葉の最後にある「ee」の音が、笑顔のように口角を持ち上げる形になるため、より自然に笑っているように見える写真を撮ることができました。
日本で「はいチーズ!」が広く知られるようになったのは、1963年に放送された雪印乳業のチーズのテレビCMがきっかけです。
このCMで「Say cheese!」というフレーズが紹介され、それが日本全国に普及しました。ただし、日本語の発音では「チーズ」の「ズ」が口をすぼめる形になり、本来の笑顔とは異なるため、撮影時にカメラマンが撮る側に向けて「はいチーズ!」と言う習慣が根付いたとされています。
また、美味しいものを想像すると自然と笑顔になるという考えから、このフレーズが好まれるようになりました。現在では、様々な撮影の合図が存在しており、例えば「1+1は?」と尋ねることで答える側が「2!」と返答し、自然な笑顔を作るような工夫もされています。
世界で避けるべきピースサイン
ピースサインは国や地域によって異なる意味を持つため、特定の国では注意が必要です。
例えば、ギリシャでは手のひらを相手に向けると、非常に侮辱的なジェスチャーとされ、「消え去れ」という意味に解釈されることがあります。このジェスチャーの起源は、過去に犯罪者への蔑視の表現として使われたことにあります。
一方、イギリスやオーストラリア、アイルランド、ニュージーランドでは、手のひらを自分に向けてピースサインをすると、それが性的な意味を含む侮辱と見なされることがあります。これは「裏ピース」と呼ばれ、通常の「ピースサイン」とは異なり、相手を不快にさせる可能性があります。
ピースサインは日本では写真撮影時の楽しいポーズとして広く受け入れられていますが、ギリシャのように全く異なる文化的解釈が存在する国もあります。そのため、異文化の中でのジェスチャーの使用は慎重に行うべきです。海外に行く際には、その国特有のジェスチャーや意味を事前に学び、不快な誤解を避けるための準備が重要です。