日本人にとって、そばは非常に馴染み深い食べ物です。本格的な手打ちそばから、手軽に購入できる乾麺や生麺、さらにカップ麺としても楽しむことができます。
最近では、家庭でそば打ちに挑戦する方も増えており、自家製そばの美味しさに魅了される人も多いようです。
そんなそばですが、実は種類が豊富で、それぞれ異なる特徴を持っています。本記事では、更科、田舎、藪、砂場、十割、二八といったそばの種類について、詳しく解説します。
そば粉について
そばの麺は、白っぽいものから黒っぽいものまで、見た目に違いがあります。これらの色の差は、使用されるそば粉の種類によるものです。
そば粉は大きく4つの種類に分けられ、それぞれ特徴が異なります。
● 一番粉
そばの実を挽いた際、最初に得られる粉が一番粉です。
そばの中心部である胚乳部分を使用しており、主成分はでんぷんです。
この粉は、非常にきめ細かく、滑らかな質感が特徴です。そのため、つながりにくく、職人の技術が必要とされる粉でもあります。
風味や香りは控えめですが、口当たりが軽く、上品な味わいです。この粉は「更科粉」とも呼ばれ、主に白く上品なそばに使用され、見た目にも美しい仕上がりとなります。特に、のどごしを重視するそば好きに人気です。
● 二番粉
一番粉の次に得られるのが二番粉で、そばの実の胚乳の周辺部分から取れる淡い緑黄色の粉です。
この粉は適度な粘りがあり、製麺しやすいのが特徴です。香りや味が豊かで、栄養価も高く、健康志向の方にも好まれます。
「並み粉」とも呼ばれ、一般的なそば作りに広く用いられ、家庭でのそば打ちにも適しています。二番粉を使用したそばは、ほどよいコシがあり、噛むほどにそばの風味を楽しむことができます。
● 三番粉
さらに外側から挽き出された粉が三番粉です。黒みがかった色をしており、香りや風味が二番粉よりも強く、栄養価も高めです。特に、そばの実本来の味わいを堪能できる粉として評価されています。
この粉で作るそばは、しっかりとしたコシがあり、噛み応えがあります。そば通の間では、そばの香りを存分に味わいたい場合に選ばれることが多く、風味の豊かさが魅力です。
● 四番粉
最後に得られるのが四番粉で、最も外皮に近い部分を含む粉です。香りは強いものの、繊維質が多く、食感はややざらつきがあります。色も濃く、見た目にも素朴な印象を与えます。
この粉は主に乾麺やそば菓子などに利用されることが多く、長期保存に適しています。また、食物繊維が豊富で、健康を意識した食品にも活用されています。
そばの製法について
代表的なそばの製法について6種類ほどご紹介します。
● 更科そば
更科そばは江戸そば御三家の一つとして知られており、寛政元年(1789年)に創業した「信州更科蕎麦処 布屋太兵衛」がその発祥とされています。
そば粉の中でも特に精製度の高い一番粉を使用し、真っ白な麺が特徴です。淡白で上品な味わいを持ち、つるりとしたのどごしの良さが際立っています。
更科そばはその見た目の美しさから、高級店や贈答用としても人気があります。薄味のつゆとも相性が良く、上品なそばとして多くの人に親しまれています。
● 田舎そば
対照的に、田舎そばはそばの実を丸ごと挽いた粉を使うことで、黒っぽく太めの麺となり、独特の香りや風味が楽しめます。
噛むほどにそばの風味が広がり、素朴な味わいを堪能できるのが特徴です。田舎そばの定義は明確ではなく、地域によって太さや風味に違いがあります。
都市部の洗練されたそばとは異なり、田舎そばは地方色豊かな昔ながらの味わいを楽しむことができます。
● 藪そば
藪そばも江戸そば御三家の一つで、創業時期は不明ですが、店舗が藪の中にあったことが名前の由来とされています。
藪そばの特徴は、そばの実の甘皮を多く含む粉を使用しており、緑がかった色合いと豊かな香りが楽しめることです。
特にそばつゆは濃口醤油を使用し、塩辛さが際立つのが特徴で、江戸っ子がそばの先だけをつゆにつけて食べるスタイルが広まりました。しっかりとした味わいを求める人に愛されるそばです。
● 砂場そば
砂場そばは、江戸そば御三家の一つとして知られ、その起源は大阪城の建設時にさかのぼります。
当時、大阪城築城に携わった多くの労働者たちが、手軽に食べられるそばを求めて利用したとされています。
名前の由来は、大阪市内に点在していた資材置き場「砂場」に由来すると言われており、そこにそば屋が誕生したことから広まったと伝えられています。その後、江戸に移転し、庶民の間で親しまれる存在となりました。
砂場そばの特徴は、甘めで濃厚なそばつゆにあります。出前文化が根付いていた当時、そばが伸びないようにと考案されたもので、時間が経過しても美味しく味わえる工夫が凝らされています。江戸時代には職人や商人たちの間で重宝され、今でもその伝統が受け継がれています。
また、砂場そばは見た目の美しさにも特徴があり、細めの麺がつるりとしたのど越しを提供します。上品な甘みのあるつゆとの相性が抜群で、関東地方を中心に多くの人々に愛されています。
● 十割そば
十割そばとは、小麦粉などのつなぎを一切使用せず、そば粉100%で作られたそばのことです。
そば本来の豊かな風味を存分に楽しめる一方で、つなぎを使わないため打つ際の技術が必要とされ、麺が切れやすくなるという難しさもあります。
十割そばの魅力は、そばの香りや独特の食感にあります。
特に、石臼挽きのそば粉を使用することで、より香りが際立ち、栄養価も高くなります。
グルテンフリーとして健康志向の人々にも人気があり、現代では専門店や家庭でも手軽に楽しめるようになっています。
● 二八そば
二八そばは、そば粉8割、小麦粉2割で作られるそばです。そばの風味と食感のバランスが良く、つなぎが入ることでコシがあり、打ちやすくなることが特徴です。そのため、そば職人の間では最もポピュラーな配合として親しまれています。
二八そばの名前の由来には諸説あり、一説には材料の割合を示しているとされ、もう一説では江戸時代のそばの価格が一杯16文(二八=16文)だったことから名付けられたと言われています。程よい歯ごたえとのど越しの良さを兼ね備え、幅広い層に支持されています。
現在では、ほとんどのそば屋で提供されており、そばの初心者から玄人まで楽しめる万能なそばとして、非常に親しまれています。
いかがでしたでしょうか。
このように、そば粉の種類によって、そばの風味や食感が大きく異なります。それぞれの特徴を知ることで、自分の好みに合ったそばを選ぶ参考にしてみてくださいね。